大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成3年(行コ)68号 判決 1991年9月04日

控訴人

中村芳幸

被控訴人

運輸大臣

村岡兼造

右指定代理人

開山憲一

外六名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が平成二年四月一九日横浜高速鉄道株式会社に対して与えたMM21線の鉄道事業免許は、これを取消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一行政庁のした処分の取消を求める訴えの提起は、その処分の取消を求めるについて法律上の利益を有する者にかぎられるところ、ここに法律上の利益を有する者とは、その処分によって、その処分の根拠法規において保護すべきものとされている自己の権利もしくは法律上の利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。弁論の全趣旨によると、控訴人が取消を求める本件事業免許は、横浜高速鉄道が経営を計画しているMM21線と称する鉄道事業について鉄道事業法五条に基づいて免許を与えたものであると認められる。

そうであるとすれば、本件事業免許は、横浜高速鉄道に対して、鉄道事業の免許を付与したというにとどまり、処分本来の効果としてはもとより、その必然的な結果としても、なんら既設の鉄道路線の廃止、変更を生じさせる性質のものではなく、控訴人が主張するように、既設鉄道路線(東急東横線の横浜駅・桜木町駅間)の廃止を生じ、これを利用する生活上の利益(このような利益が、前記法律上の利益にあたるかについては別に検討を要するところである。)が害されるとは認められない。

二控訴人は、MM21線は東急東横線の横浜駅と桜木町駅との間の路線を廃止することを前提として計画されているから、MM21線の事業免許を与えることにより、東急東横線の右路線が廃止される結果を生じる旨主張する。

しかし、鉄道事業の全部又は一部を廃止するためには、廃止しようとする路線の事業者において、別に、運輸大臣の許可を得る必要があるのであって、新路線の事業免許の効果として既設路線の廃止を招来させることは、直接的にも、間接的にもありえないところである。新路線事業者の計画段階において主張のような計画がされ、それを前提として事業免許の申請がされているとしても同様である。

三以上のとおり、控訴人は本件事業免許の取消を求めるにつき法律上の利益を有しないものであって、本件訴えは却下すべきものであるから、これと同趣旨の原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官川上正俊 裁判官石井健吾 裁判官橋本昌純)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例